SRE不動産

執行役員 不動産流通部門 部門長 東毅憲

―― 最初に、SRE不動産の流通部門について教えてください。

私が管掌している不動産流通部門は大きく分類すると売買仲介事業、プロパティマネジメント事業、買取再販事業に分かれています。売買仲介事業では、当社がソニー不動産だった時代から今まで継続して、片手仲介を前提としたエージェント制を採用していることが特徴です。今回、プロパティマネジメントの部門でSRE AI賃料査定 CLOUDの開発協力を行いましたが、そのプロパティマネジメント事業においてもエージェント制の考え方を応用しており、管理物件の客付けを行う際に自分達だけで探すことはなく、必ず他の会社に情報をオープンにして探すようにしています。このように、お客様に対して透明性や公平性の高い取引を提供することが、業界全体を良い方向に変えていくことにもつながると考えています。

―― SRE不動産におけるDXの取り組みを教えてください。

これまで、SRE AI査定 CLOUDやSRE 契約重説 CLOUD、SRE MK CLOUD等の様々なサービス開発に協力してきました。これらのITサービスを活用することで業務効率が向上しており、生産性も上がっています。もちろん当社内部で開発しているサービスだけでなく、外部サービスの導入も促進しており、VR内見やローンチェッカー等の仕組みも取り入れています。最近好評な取り組みは、お客様毎にLP(ランディングページ)を作成して、物件の紹介を行っていることです。具体的には、図面に掲載しているQRコードをスマートフォンで読み取ると、物件の特徴を紹介したWebページに遷移して、図面だけでは読み取れない物件の魅力を知ることができるようになっています。

―― DXの取り組みについて普段から意識していることはありますでしょうか。

SRE不動産の立ち上げ時から、大切にしていることは2つあります。1つは、お客様のために透明性、公平性のある業界にしたいということ。もう1つは、旧態依然とした業界を先進的なものに変えていきたいということです。これらを実現するために、エージェント制やAI・ITを駆使したDXに取り組んでいます。例えば、両手取引でなく敢えて片手を取引を選ぶことで利益相反なくオープンに公平な競争環境を作り上げていることもそうですし、AI査定を用いることで不動産エージェントが恣意的な価格査定を行うことなく、中立的な査定額をお客様に提示することができるようになっていることもそうです。 このような取り組みを行うにあたって大事にしていることは、お客様の視点に立つということです。例えば、先程のお客様別のWebページは、お客様のニーズを調査した結果、高く売りたいというニーズ以外にも、楽に売りたいというニーズが高かったため、そのような仕組みを作りました。ITサービスの導入は我々の生産性向上のためだけでなく、お客様に透明性や公平性の高い取引を提供することも重要だと考えています。

―― SRE AI賃料査定 CLOUDは、実業を行っているプロパティマネジメント部門と、サービスの開発や拡販を行っているクラウドソリューション事業本部が連携して開発しました。それについてどのように考えていますでしょうか。

プロパティマネジメント事業は不動産流通部門の中でも少数精鋭の部隊なので、他の部署と比較してDX化に遅れを感じていました。そのため、今回の新サービス開発の話をいただいた時には嬉しかったです。リアルな現場とサービス開発を行うエンジニアが直接意見を交換できるのは、新しいものを生み出すSREならではの連携ですし、リアル✕テクノロジーを推進する当社の真髄といえると感じています。プロパティマネジメント部門のメンバーも忙しい中で取り組んでいましたが、皆楽しんで積極的に参加していた印象です。 また、今回の新サービス以外でも、不動産流通部門とクラウドソリューション事業本部では定期的にクロスディスカッションの場を設けています。不動産流通部門のメンバーは公募制で挙手した志の高い人が集まっており、実務で課題に感じていることをエンジニアの方と活発に議論しています。そのようにして生まれたDXの仕組みを自社だけでなく他社にも広げていくことについても素晴らしい取り組みだと感じています。SRE不動産にとっては競合にサービスを提供しているという捉え方もできますが、その分、メリットを享受できるお客様が増えるということでもありますので、業界の発展につながることだと考えています。

―― 今回、完成したSRE AI賃料査定 CLOUDを使ってみていかがでしたでしょうか。

とても良いサービスが完成したと感じています。当初はAIによる賃料の査定精度が気になっていましたが、プロトタイプを触らせていただいた時に、適正な賃料が算出されたことに驚きました。売却のAI査定も精度は良いと感じていますが、賃料のAIは更に精度が高い印象を受けました。また、UI/UXもSREらしくスマートで好みです。誠実な印象があるので、不動産会社の方が実務で使うにはとても使いやすいのではないかと思います。 一方で、売買と賃貸、買取再販を仕事にしている我々としては、それぞれの連携がワンストップでできるようになると嬉しいと感じています。例えば、オーナーチェンジ物件を売却時にAI賃料を元に想定利回りを出すとか、反対に、オーナーチェンジの売買取引事例の利回りを参考にして、想定賃料を算出する等、多角的な査定手法が実現できると、お客様により安心感を提供できるようになると感じています。

―― 今後期待することや展望について教えてください。

課題が多い業界ですので、実現したいことはたくさんあります。SRE不動産としては新卒が増えてきた背景もあり、昨年購入組織を立ち上げました。お客様目線で考えた時、購入検討者が何を求めるのか、常に意識するようにしています。買主様はより早く新着物件を知りたい、そして購入する物件の資産価値が知りたい、そんなニーズが強いと考えています。日本では新NISAをはじめとして、国が国民に資産運用を推進しています。居住用の不動産に関しても一生に一度の買い物ではなくなってきており、住まい方も多様化しています。そのような時代で、資産の一つである不動産を購入する際に、スピーディーに資産価値を把握できれば買い逃しなく、決断を後押しできると考えています。例えば、AIが新着物件を探して、資産価値(適正価格)が分かる仕組みなどがあれば、購入検討者の方のニーズを満たせるのではないでしょうか。

また、日銀の金融緩和以降、日本には富裕層が増加しています。少子高齢化の背景で事業譲渡や相続の機会も増えています。そのようなケースでは不動産の売買や賃貸のニーズが多く存在しています。このニーズに応えるためには、不動産以外の金融や税制等の幅広い知識や提案力が不動産エージェントに必要になります。それだけでなく、金融資産、株、投資信託、債券、不動産など、これらのポートフォリオをどう組むのか、どういう人生を送りたいのか、それらを可視化するAIプロダクトがあると良いなと思っています。 求めるとキリがないですが、お客様にとって価値のある提案ができること、不動産仲介で働く方にとって、生産性が向上して良い業界になることを目指していきたいと考えています。